toggle
2020-04-15

樹木希林|万引き家族の口パク何て言ってるの?是枝監督が語るエピソード

是枝裕和監督がラジオ番組『RADIO SWITCH』で樹木希林さんとの『万引き家族』での想い出などについて語られたので、その内容をご紹介します。

是枝監督にとって樹木希林の存在とは?

樹木希林さんは、是枝監督の作品に6作出演されてきました。晩年の樹木希林さんをよく知る是枝監督にとって、どのような存在だったのでしょうか。

是枝監督はこのように語られました。

うまくいえないが、育ててもらったという感じがする。

監督ってピラミッドの頂点に立とうと思えば立ててしまうし、みんないうこと聞く。わがままに振る舞おうと思えばそうできる危険性があるが、希林さんみたいな人がいてくれると、歯止めになる。

希林さんに「だめなのね、あなた」と思われたくなかった。

彼女の前ではちゃんとした人間でいたい。ちゃんとした監督でいたい。常に前作を上回る成長する監督でいたいと思っていた。

樹木希林と是枝監督の最後の作品『万引き家族』

是枝監督が樹木希林さんに『万引き家族』への出演のオファーをした時、樹木希林さんが癌だということを忘れるくらい元気だったそうです。

話の途中で亡くなるという役柄でしたが、その時はあまり深く考えずに依頼し、樹木希林さんも承諾してくれたそうです。

樹木希林さんはこの時点で、『万引き家族』が最後の是枝作品になることをわかっていたのでしょうか。

樹木希林さんは、『万引き家族』の撮影が始まり、記者会見を開いた時に、「監督とはこれが最後になるので。」ということをおっしゃいました。その時、是枝監督は、樹木希林さんがやはりまだ元気だったので、「ん?」と少し不思議な感じがしたそうです。

是枝監督は、樹木希林さんがその時からなんとなく”終活”に入りながら、どういう作品にするか選んでいるような気がしていたそうです。

『万引き家族』海辺の口パクシーンで見せた樹木希林の驚きの演出

海辺でみんなが海水浴をしている時に、樹木希林さんはみんなが楽しむ姿を遠くから見ながら「ありがとうございました。」と声にならない声を発しました。

『万引き家族』は当初は”声に出さないことを大事にする”というテーマで、『声にだして読んで』というタイトルでした。

そのタイトルの台本を読んだ樹木希林さんが自分で考えて、「ありがとうございます」と言ったそうです。

映画の最後のシーンで、バスの中で少年が帽子を深くかぶって、追いかける父親に向かって、「お父さん」とパクパクとつぶやくように、他の役が声にならない声を発している中で、樹木希林さんは「私はここで。」と考えたそうです。

カンヌ国際映画祭での樹木希林

クランクアップから2ヶ月ちょっとというスピードで、『万引き家族』は完成されました。

是枝監督は、樹木希林さんの病状の変化を予見していたわけではないが、カンヌ国際映画祭の時の樹木希林さんは、1ヶ月前に比べるとかなり痩せて歩くのがやっとという印象だったため、早く仕上げてよかったと感じられたそうです。

レッドカーペットは樹木希林さんと手を組んで歩かれましたが、「楽しい」とか「晴れやかな気持ち」とは程遠く、是枝監督に捕まる樹木希林さんの手が何かにすがるようで辛かったそうです。

”生きる”ことに対する共通の価値観

普通の作品であれば、”死”を予感させて、どんどんそちらに向かうという手続きを映画の中でしていくものが多いが、是枝作品は、”生きる”ということが前提で、”死”があります

例えば、『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』は、”死”を最初から予感させるストーリーだったため、樹木希林さんは不満を感じていたそうです。

”生きる”ということはそういうものではないのに、どんどん”死”を追いやるというのは、違うと思っていたそうです。

是枝監督は、この点に関して、価値観を共有できていたため、安心して見ていられたそうです。

樹木希林の是枝監督への最期の想い

樹木希林さんは、生前に義理の息子・本木雅弘さんから「是枝さんに会わなくていいの?」と聞かれた際に、一度目は

いいの。別れはもう言ったし、私は十分会ったから。あの人に会いたい人はたくさんいるんだから。あとは若い人に。

とおっしゃったそうです。

しかし、もう一度本木雅弘さんが「ほんとうにいいの?」と訪ねたら、

そりゃ、死んでいく姿を美代ちゃん(浅田美代子さん)だけじゃなく、監督にしっかりみせた方が肥やしになるだろうけど、会えないから残せる”感慨”ってものもあるでしょう。それに、カトリーヌ・ドヌーヴ※があんまり良い芝居したらいやだなぁ。ちょっと意地悪してるのよ。

※…是枝裕和の最新作で、2019年10月11日(金)より公開される映画『真実』の主演女優で、樹木希林さんと同世代。

是枝監督は、それを聞いてちょっと腑に落ちたというか嬉しくなったそうです。そうか、嫉妬してくれてたんだと。

そして、お通夜からの帰り道、是枝監督の母の命日も同じ9月15日であることに気づき少し涙が出たそうです。

ちなみに、是枝監督は樹木希林さんの最期について、このように語られました。

家族の前でしか見せない弱みや苦しみはあっただろうから、「見事な最期だった」とは言えないが、希林さんが余命宣告をして、「終活します」と言ったのが、3月の終わり。

そこからの5ヶ月ちょっとは、それに向けて自分から色んな準備をしていく状態だった。

すごい演出家だった。みんながあんな風に幕引きできない。

関連記事